法話・感話

「真っ赤な満月」ー阪神淡路大火災から25年ー
2020.1.17|法話・感話

  震災の追悼式を伝える 読売テレビ 「ten」より

 

あの朝1月17日の出来事は25年経った今でもはっきりと覚えています。

 

未明の5時46分でしたかいつもはまだ寝ている時間です。さすがに特別な地鳴りに

目が覚めたようで、大きな地震独特の遠くからの微振動が近づいてきたかと思うと、

強い突き上げるような縦ゆれがガタガタと来て「大地震や!」と跳び起きました。

机に積んでいた書類が崩れたり、本棚の本がドサっと落ちたり、周りの家具が

倒れないように大の字になって暫く踏ん張っていました。きつい揺れが体感

2~3分でしょうか、少し収まって隣の子ども部屋に飛び込むと、当日10歳の

誕生を迎えた小学生の長男と妹が平気で二段ベッドで寝ていたりキョトンと

しているのには驚きながらもホッとしたものです。

 

大地震の時は激震地の情報が直ぐに伝わってこないことが、その後分かりました。

テレビをつけると情報が飛び交っていましたが、近畿の各地に震度が4とか5とか

表示されているのに神戸あたりはすっかり抜け落ちているのです。

 

八尾では震度5弱だったので大きな被害は無いようでした。家具の倒壊は無く

本堂前に出ると右の石燈籠の頭が外れて落ちていました。本堂大屋根では西側の

鬼瓦の下げの瓦が落下して道沿いの川に落下していました。通行人のいる時間帯なら

怖かったろうと思われます。屋根瓦全体に緩んだようで、その後の本堂大修復

への道筋になったキッカケになったのも事実です。山門の瓦が緩んで上部に

隙間が出来ていました。内陣に大きな傷みは無かったのですが、御本尊の阿弥陀さんが

少し回転して斜め横を向いていらっしゃいました。揺れとともにコトコト

と回られたのでしょう。しかし、八尾での様子はその後知らされた神戸や淡路の大惨事

とは比べられないほど軽微なものだったのです。

 

テレビには午前中に次々震源近くの被災状況が伝えられていました。その極め付けが阪神

高速道路の高架が何キロにもわたって倒壊している様子や走行バスの宙ぶらりんの衝撃的な

映像でした。巨大なビルも丸ごと倒壊している姿は日本では見たこともありません。

続いて、各地に火の手が上がり街中が炎と煙に包まれて、大空襲された街のような光景でした。

八尾から大阪湾を隔てて数十キロしか離れていないすぐそこでの大災害でした。

 

その日の夕方日が暮れ始めた東の空に、忘れもしない「真っ赤な満月」が昇っていました。

震災大火災の膨大な煙霧が広がり、冬の透明なはずの大気を染め満月を真っ赤に

染めていたのです。

 

私には自然をわがまま放題に駆逐し尽くす私たち人間に

「いい加減にしないと、大変なことになるぞ!」

と叱ってくれている姿に見えました。見たこともない怖く赤い月でした。

住職

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